日本の税金の歴史②【明治時代以降の近代税制から平成時代の税制に至るまで】【猫が教えるシリーズ】

税金全般
こんな方にオススメです

・税金の仕組みについて基礎から学びたい方

・税金の仕組みについて“楽しく”学びたい方

・税金のことについて少しでも興味のある方

明治時代の税制

ネコくん
ネコくん

明治時代の税の話をしていくよ…

1873年に明治政府は地租改正ちそかいせいという税制に関する条例を打ちだすよ!

🐱 地租改正の概要

1873年に明治政府が打ち出した地租改正は、土地の所有者を明確にして、その人たちから安定した現金の税収を得るための条です。

全国の土地に地価ちか(土地の価格)をつけて、地価の3%を地租ちそ(税金)という形で土地の所有者が現金を納めるよう義務づけました。

また、この地租改正によって現物納入の年貢の制度が廃止されました。

お米より現金を集めた方が国にとって都合良かったってことかな?

クマさん
クマさん
ネコくん
ネコくん

うん!明治時代に入ってからは貨幣経済が発達して、外国との貿易では当時の世界共通の通貨である金貨や銀貨が必要だったからね。
 
米や農作物では貿易の支払いが出来なかったから政府としては現金が欲しかったのさ。

なるほどね。現金を納めるということでまさしく税“金”というシステムが全国規模でできあがったんだね。 

クマさん
クマさん
ネコくん
ネコくん

ただ、地租改正を導入してすぐは納税者から反感があったんだ。

🐱 地租改正における問題

地租改正は政府側からすれば安定した税収が見込めるから都合が良かったのですが、納税者側にとっては土地の価格に対して3%を納めさせるというのはとても負担が大きいものでした。

そして、1875年ごろから政府に対して地租改正反対一揆はんたいいっきが勃発しました。その甲斐もあって地租は3%から2.5%に引き下げられました

ネコくん
ネコくん

そして1887年、ついに所得税が導入されるんだ!

おぉ!現代日本でもお馴染みの所得税か!

クマさん
クマさん

🐱 所得税の導入

1884年に大蔵省でイギリスの税制をもとにして源泉課税方式を盛り込んだ所得税法草案が作成されていました。

1887年の導入時には、モデルをイギリス型の税制からプロシア型の税制に転換したという学説もあります。

当時の所得税は年間所得金額が300円以上の人のみを対象としていました。ちなみに年収300円以上の人はとても少なくて当時の納税者の人口の0.3%だったと言われております。

上位0.3%!?当時の所得税は超お金持ちの国民だけによる税金だったんだね。

クマさん
クマさん
ネコくん
ネコくん

うん!そんな上澄みの極一部しか納税できなかったから当時は所得税を別名で名誉税なんて呼んでたよ!

そして1899年、所得税に大きな改正があった。

🐱 1899年の所得税の改正

所得税の改正により法人にも所得税が課せられる法人所得税が導入されました。法人税の元祖にあたるものですが、当時は独立した法人税が無く所得税の中に組み込まれていました。

ふーん。当時は法人税にあたるものが所得税に組み込まれてたんだ…

クマさん
クマさん
ネコくん
ネコくん

時が経ち20世紀…日露戦争にちろせんそうが開戦された。

その戦費調達のために地租と所得税の税率が引き上げられ、相続税が初めて導入されたんだ。

🐱 日露戦争に伴う税率の引き上げと相続税の導入

1904年に開戦された日露戦争で日本は戦費を調達する必要がありました。第一次増税として非常特別税法により、様々な税の増税を行いました。

しかし、戦局が進むにつれ更に戦費が必要となりました。第二次非常特別税法により、地租や所得税などの税率が再び引き上げられ、相続税が導入されました。

現代の相続税は富の再分配を目的としているので、当初の戦費調達のための相続税とは全く目的が違うものでした。

また、導入時の相続税は、相続を家督相続かとくそうぞく遺産相続いさんそうぞくに分けて課税しておりました。

家督相続は、被相続人である戸主こぬし(戸籍の筆頭者)から、長男にすべての財産を一括で相続することです。それに対して遺産相続は、戸主以外の家族の死亡により財産を共同分配して相続しました。

また、家督相続の相続税率は1,000分の12(1.2%)、遺産相続の場合は1,000分の15(1.5%)とされており、非常に低い税率でした。また、現代では家督相続の制度は廃止されており、相続は遺産相続のみになっております。

えぇ?最初の相続税って戦争の資金集めのための税金だったんだ…

クマさん
クマさん

大正時代から昭和時代初期の税制

ネコくん
ネコくん

大正時代は、文化、社会の発展(大正デモクラシー)とともに経済が発展していった時代だ。既存の税制についても大きな改正があった。

🐱 1913年の所得税の改正

所得税の改正で超累進課税率ちょうるいしんかぜいりつが導入されました。超累進課税率は、累進課税率のひとつで所得金額が一定額以上となった場合に、その超過金額に対してのみ、標準税率より高い税率を適用させます。

また、現在の給与所得控除にあたる勤労所得控除が導入されました。勤労所得控除は所得の低い者は所得税が控除される制度です。

これらの導入により、所得の格差拡大の防止がはかられ現代の所得税の仕組みに近いものになりました。

ネコくん
ネコくん

時間を進めて昭和時代…1937年に日中戦争にっちゅうせんそうが開戦された。

日露戦争の時と同様、戦費調達のための新しい税金が導入されたよ。

🐱 物品特別税・物品税の導入

1937年、盧溝橋事件ろこうきょうじけんの発生により日中間の緊張が高まり日中戦争が開戦されました。当時はこの紛争は北支事変ほくしじへんと呼ばれており、戦費を調達するために北支事件特別税ほくしじへんとくべつぜいと呼ばれる特別税が規定されました。

その中で、物品特別税ぶっぴんとくべつぜい(のちの物品税)が導入されました。当時の物品特別税は、貴金属や写真機などの贅沢品ぜいたくひんが輸入品も含めて課税の対象となっていました。

戦局が進むにつれ、戦費が更に必要となり物品特別税の対象となる物品と税率が増えました。そして、戦費調達のための臨時税という扱いだった物品特別税でしたが、1940年に恒久法として物品税ぶっぴんぜいが制定されました。物品税は消費税の元祖にあたる税です。

導入時の物品税は、物品特別税の税率と対象となる品目をそのまま引き継いだものでした。しかし、戦局が更に進むにつれ課税対象となる物品の追加とと税率の大幅な増加がありました。

消費税の元祖にあたる物品税かー…
戦争によって誕生した税って結構あるんだなー…

クマさん
クマさん
ネコくん
ネコくん

さらにこの戦況下での1940年の所得税の改正は要注目だ。

🐱 1940年の所得税の改正と法人税の新設

所得税の改正により、今まで所得税の中に組み込まれてた法人所得税が所得税から独立し、法人税が設立されました。当時の法人税は累進課税率ではなく、税率18%の比例税率(一律で同じ税率)でした。

この時代は激動の時代だね…

クマさん
クマさん
ネコくん
ネコくん

まだまだあるよ!この法人税誕生と同じ年の1940年に源泉徴収制度げんせんちょうしゅうせいどが導入されたよ

🐱 源泉徴収制度の導入

戦費調達の効率化を目的とし、1940年に給与所得の源泉徴収制度が導入されました。源泉徴収制度は、給与や報酬の支払いをする前に所得税を控除する制度です。

この源泉徴収制度の導入時は、戦費調達の効率化を目的としていましたが、税を効率よくできるので恒久化され現代に至るまで続いています。

昭和時代中期の税制

ネコくん
ネコくん

戦後の日本…戦争で疲弊してインフレが加速しているなか1947年に申告納税制度しんこくのうぜいせいどが導入された。

🐱 申告納税制度の導入

第二次世界大戦後の1947年、経済の民主化の一環として所得税、法人税及び相続税に申告納税制度を導入しました。申告納税制度は、納税先に申告を行うことにより税額を確定させ、この確定した税額を納税者自身が税金を納付する制度です。

これまでの日本では、納付すべき税金の額を行政が確定する賦課課税制度ふかかぜいせいどが導入されていました。戦後で疲弊した日本において、賦課課税制度から申告納税制度への切り替えは非常に大きな混乱を招くものであり税金の滞納が頻発しました。

日本がこんなに大変な状況だからほとんどの国民達がこの制度に対応する余裕なんて無かったんだろうね。

クマさん
クマさん
ネコくん
ネコくん

そうだろうね…そんな日本の税制にアメリカからのメスが入ったんだ。
それがシャウプ勧告

🐱 シャウプ勧告とは?

第二次世界大戦後のアメリカの影響下にあった日本でシャウプ勧告に基づいた税制が1951年に施行されました。

シャウプ勧告は、GHQの要請によって1949年に結成され、カール・シャウプを団長としたシャウプ使節団による日本の税制に関する報告書の総称です。1949年8月に日本税制報告書が、1950年9月に第二次報告書が提出されています。

直接税を中心として恒久的・安定的且つ公平な税体系を目指すためにシャウプ勧告は施行されました。

内容としては、

・直接税中心主義への切り替え

・所得再分配機能の強化

・申告納税制度の定着化

・富裕税の新設

といったものでした。

1951年の税制改正時には、シャウプ勧告で提示された案をほぼ全面的に採用されました。採用されて数年のうちに運用上の問題で一部制度の改廃(1953年の富裕税撤廃など)がありましたが、この税制は戦後の日本の経済に大きく影響を与え、現在でも基本体系は大きく変わっておりません。

なるほどね。公平な税制を作りあげようとしたんだね。

クマさん
クマさん
ネコくん
ネコくん

シャウプ税制は公平な税体系を目指すことを掲げてたけど、戦後復興期の社会や経済の実情にそぐわないこともあって何度か修正されたんだよね…

この税制改革で所得税や法人税などの直接税の体系はかなり出来上がったよ!

昭和時代後期の税制

ネコくん
ネコくん

1955年頃から1973年のオイルショックまでの日本は大きく経済成長した時期(高度経済成長期)だ。その間にも税制の変化があったんだ。

🐱 高度経済成長期の税制について

1955年頃から1973年のオイルショックまでの日本は飛躍的に経済を成長させていった高度経済成長期と呼ばれる時期になります。

累進課税制度を取り入れてる所得税では所得が増えるにつれ税率が上がっていきます。高度経済成長期においては、所得や物価上昇のインフレが生じたため、所得税の減税が毎年行われていました。

高度経済成長期の日本は増えすぎた所得税の税収を国民に還元していく時期だったと言えます。

税収が増えすぎたから毎年減税するなんて今じゃ考えられないね…

クマさん
クマさん
ネコくん
ネコくん

本当にすごい時代だよね。現代じゃ毎年増税だからね…

この間好況が続いた日本なんだけど、1973年のオイルショック以降日本の経済は苦境に
立たされることになるんだ!

🐱 オイルショック以降の税制について

1973年に第四次中東戦争により、第1次オイルショックが起きました。原油の供給逼迫によりる原油価格の高騰に伴い、世界経済の衰退をもたらした出来事です。

第1次オイルショックの翌年の1974年では経済成長率が戦後初のマイナス成長を記録しました。国民の所得が大きく減ったため、それに伴い所得税や法人税の税収も大きく減りました。以降、毎年の日本は赤字国債を発行する事態となっています。

高度経済成長期までの日本では、所得税や法人税などの直接税をメインで税収を確保していましたが、不景気になった際にこれらの税収が落ち込んでしまうという問題点がオイルショックを機に浮き彫りになりました。

その厳しい日本の財政状況の中で、安定した税収を目指すため一般消費税といった間接税の制度の新設が検討されました。1987年には、税制の抜本的な見直しが議論され、税法案が国会に提出されましたが、審議未了のまま廃案となりました。

また、所得の低迷に対する措置として法人税率が段階的に引き下げられ、所得税は税率構造を簡素化するとともに、基礎控除になる額が引き上げられました。

高度経済成長期から一転して日本は厳しい財政状況に陥ったんだね…

クマさん
クマさん
ネコくん
ネコくん

そうだね…それで直接税だけじゃなく新しい間接税の制度も検討されたけど昭和のうちには実現しなかった…

平成時代の税制

ネコくん
ネコくん

そして、時は流れて平成の時代!

平成に入ってすぐの1989年に消費税が導入されたんだ!

🐱 消費税の導入

この時から日本は、人口の高齢化が進んでおり、年金、医療、福祉のための財源確保が課題となっていました。従来のような所得税を中心とした直接税制では、今後の働き手の税負担の増加に伴い、事業意欲や勤労意欲が阻害されることが懸念されました。

また、現役世代の働き手のみに税負担が偏りすぎていて公平性を欠いていたことも課題となっていました。

こういった背景を踏まえ、平成に入ってすぐの1989年4月1日に消費税法が施行されました。最初の税率は3%でした。物品税との違いは、「物品」だけでなく「サービス」も対象になったことです。

その後の消費税は、1997年に5%、2014年に8%と段階的に引き上げられ、2019(令和元)年10月には10%(飲食料品や新聞は軽減税率適用で8%)に引き上げられました。

今では身近で当たり前のようにある消費税だけど、平成に入ってからの税制だったんだね。

クマさん
クマさん
ネコくん
ネコくん

今でも消費税に対する反発は少なからずあるけど、導入してすぐは各地で反対運動があるほど拒否反応がすさまじかったんだ!

今回は近代税制をメインに税の歴史を解説したよ!

税金の歴史についてよく分かったよ!ありがとうネコくん!!

クマさん
クマさん

コメント

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